技術解説 2015年3月29日

太陽光発電におけるインバータの選定方法と使用のポイント

独立型太陽光発電におけるインバータとは、バッテリーから100V交流電源を生成する機器です。インバータがあれば100Vで動作する一般家電などが使用できますので、独立型太陽光発電の用途が一気に広がるでしょう。

インバータの導入にあたっては、注意すべき事項もありますので、よく確認して選定するようにしましょう。

インバータの効率は意外に低い

まず、インバータの効率は比較的低いという点に留意が必要です。チャージコントローラの効率は90%を超える場合も多いのですが、インバータは昇圧回路である特性上、効率が70%程度しかない製品も珍しくありません。

効率が低いということは、同じ負荷に対して、より大きなソーラーパネルとバッテリーが必要になるということです。逆に、効率が高いインバータを利用すれば、ソーラーパネルやバッテリーのサイズを小型化して、負荷が必要とするギリギリの規模で設計することができます。

特に、バッテリーからインバータで100Vに変換して、再びACアダプタで直流9Vに変換して負荷につないでいるような場合には、100Vを経由する分のロスが大きくなります。インバータの効率が70%、ACアダプタの効率が80%とすると、0.7×0.8=0.56となって、約半分が損失になります。言い換えれば、ソーラーパネルの規模やバッテリ容量の半分を無駄にしていることになります。電力源が限られている太陽光発電システムだからこそ、気を付けたいところです。

直流で動作する負荷の場合には、なるべく100Vを経由せずに、12Vバッテリーから9Vを生成するようなDC/DCコンバータと呼ばれる機器を導入するのが良いでしょう。

インバータの出力は十分に余裕を見る

インバータの電力容量は、負荷に対して十分な余裕を見ることが必要です。例えば300Wの負荷に対して、300Wの容量のインバータを導入すると、保護回路が働いて正常に動作しない可能性があります。少なくとも1.5倍、余裕をみて2倍程度の電力容量を見ておきましょう。

待機電力に注意

インバータは負荷がない時でも常に待機電力を消費します。まったく機器を使っていないのにバッテリーがあがってしまった、という場合にはインバータの待機電力を疑ってみてください。

待機電力は、待機電流(無負荷時電流とも呼ばれます)とバッテリー電圧から計算できます。例えばバッテリーが12Vで待機電流が30mAの場合、12*0.03=0.36Wとなります。24時間に換算すると0.36*24=8.64Wh消費することになります。電流のまま計算すると、0.03*24=0.72Ahとなります。

ケーブルの選定も重要。太く短くが基本。

バッテリーからインバータに接続するケーブルにも十分な注意が必要です。

1000W程度のインバータの場合、入力電流は最大で約10A程度になります。大きな電流をケーブルに流す場合には、ケーブルが持つ微小な抵抗や、バッテリーとケーブルの接続部分の接触抵抗によってジュール熱が発生して、損失になります。

仮に、ケーブルの持つ抵抗値が5mΩ、接触抵抗が5mΩだとしましょう。合計で10mΩの抵抗が回路に挿入されていることと等価になります。ここに10Aの電流を流すと、10×10×0.01=1(W)が損失になります。さらに20Aを流すと、20×20×0.01=4(W)もの電力が失われます。これがプラス側とマイナス側の2本のケーブルに生じますので実際には損失は2倍になります。

もし細いケーブルに大電流を流すとジュール熱により発火・発煙し、火災の原因となりますので十分な注意が必要です。

ケーブルの抵抗値は芯線の直径とケーブルの長さに依存します。できるだけ太く短く配線することで損失を減らし、高い効率のシステムが構築できます。

なお、ケーブルを太く短くする点については太陽光発電システム全体に言えることですので、ソーラーパネルからチャージコントローラまでの配線についてもぜひ見直してみてください。

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